ある店で売っているテニスボールは、硬式用3個の値段と軟式用5個の値段が同じである。 また、硬式用8個の重さと軟式用13個の重さが同じである。 両方のボールを同じ金額ずつ買ったところ、軟式用の方が軟式用のボール1個分重かった。 軟式用のボールを何個買ったかを求めなさい。
2005年 立教新座高校
テニスボールの具体的な「値段」や「重さ」は、この問題には関係がない。 値段や重さの「比」さえわかれば解けてしまう。
$ aX=bY $ という等式があって、$a$ と $b$ が『互いに素』(1以外に共通の約数がない)の場合、 $k$ という任意の数を用いて、$ X=bk $,$ Y=ak $ と表すことができる。これは数学的に重要なことである!
抽象的なので具体的な説明をしよう。$ 3X=5Y $ という等式があるとする。3と5の関係を「互いに素」という。 簡単に言えば、共通の約数が1しかない。他にこの2つの数を同時に割り切る数が見つからない。 これを「互いに素」の関係という。
この場合、$X$ に入る数に5の掛け算が含まれていないといけないことが重要である。 なぜかというと、右辺には5の掛け算がある。しかし、左辺は $3X$ となっているので、3の掛け算はあるが5の掛け算がない。 だから、$X$ に5の掛け算が含まれないと等式が成り立たなくなってしまう。 だから、$X$ は任意の数 $k$ を用いて、$ X=5k $ と表すことができる。 「$X$ に入る数には、5の掛け算を含んでいますよ」ということ。
同様に右辺に関しても同じことがいえる。左辺には3の掛け算があるが、右辺には3の掛け算が見当たらない。 だから、$Y$ に当てはまる数には3の掛け算がなくては等式が成立しなくなってしまう。 よって、任意の数 $k$ を用いて、$Y=3k$ と書ける。
硬式用3個の値段を $K_p$ 円、軟式用5個の値段を $N_p$ 円とする。文字右下の添え字の p はprice(値段)の頭文字を使った。 「硬式用3個の値段と軟式用5個の値段が同じである」とあるので、$ 3K_p=5N_p $ が成り立つ。 ここで、3と5は「互いに素」なので、任意の数 $p$ を用いて、 $ K_p=5p $,$ N_p=3p $ ・・・① と表すことができる。
「また、硬式用8個の重さと軟式用13個の重さが同じである」といっているので、 硬式用8個の重さを $K_w$ 円、軟式用13個の値段を $N_w$ 円とすると、$ 8K_w=13N_w $ が成り立つ。 文字右下の添え字の w は、weight(ウエイト=重さ)の頭文字を使った。
8と13も「互いに素」なので、任意の数 $q$ を用いて、$ K_w=13q $,$ N_w=8q $ ・・・② と表せる。
具体的な重さがわからないが、硬式用と軟式用の値段と重さをそれぞれ文字 $p,q$ を使って表すことができた。
ここで硬式用のボールを $x$ 個、軟式用のボールを $y$ 個買ったとする。
「両方のボールを同じ金額ずつ買った」とあるので、①で表した金額を用いて、 $ 5px=3py $ ・・・③ と等式を作ることができる。左辺が硬式用のボールを $x$ 個買ったときの値段で、 右辺が軟式用のボールを $y$ 個買ったときの値段である。 $p \neq 0$ だから、両辺を $q$ で割って、$ 5x=3y $ ・・・③'
次に、「軟式用の方が軟式用のボール1個分重かった」とあるので、②で表した重さを用いて、$ 13qx=8q(y-1) $ ・・・④ と等式を作ることができる。右辺は軟式用のボール1個分を引くことによって、 左辺の硬式用の重さと釣り合うようにしている。$ q \neq 0 $ だから、両辺を $q$ で割って、$ 13x=8(y-1) $ ・・・④'
③'④'式の連立方程式を解けばよい。$x,y$ の普通の連立方程式である。
∴ $ x=24 $,$ y=40 $
求めたいのは、軟式用のボールの個数だから、40個 ・・・(答)
小学生は方程式を習っていないので、「硬式用8個の重さと軟式用13個の重さが同じ」ということから、 重さを硬式用が130g、軟式用が80gなどと適当に仮定する。これを使って問題を解く。
「硬式用3個の値段と軟式用5個の値段が同じ」ということから、 個数の比3:5を守ったまま個数を調整し、軟式ボール1個80g分重くなる個数を考えればよい。
このように、具体的な数値(金額や重さ)が分からなくても、 「比」が分かれば解ける問題もあるということ。 この小学生レベルの発想は数学的に重要である。